発酵tips

【注意】これだけは覚えておきたい、発酵食で危ない菌5選+番外編【菌別の対策有り】

発酵食は微生物の力を借りて作るものが多くあります。

しかし、一歩間違えれば有害な菌が繁殖して食中毒の原因にもなり得ますので、発酵食を楽しむには微生物の危険な面も知っておく必要があります

この記事では発酵食好きにぜひ知っておいて欲しい危険な菌とその対策を6つ紹介します。

本当は例を挙げればまだまだたくさんあるのですが、特徴的な菌に絞りました。

これだけでも覚えておいてもらえると食中毒のリスクが減られますので、ぜひご参考ください。

こんな方におすすめの記事…

  • 発酵食の危険な面も知っておきたい
  • 食中毒のリスクを減らす方法を知りたい
  • 安全に発酵食を楽しみたい

▼▼▼▼▼この記事を書いた人▼▼▼▼▼

スタコジ

スタコジ(@jitakuseigikuin)と申します。

普段は造り酒屋で蔵人として10年以上働く発酵のプロ。

酒造りに携わる一方で、麹を中心にした発酵食を紹介している麹ブロガーです。

まず、食中毒を引き起こす菌は毒素タイプ感染タイプに分かれます。

毒素タイプ

毒素を出すタイプは菌そのものは無害ですが、ある条件で人間に有害な成分を生成します。

この記事で紹介するのはボツリヌス菌黄色ブドウ球菌の2つです。

ボツリヌス菌

ボツリヌス菌の特徴

ボツリヌス菌は地上で最も強い毒性を持つボツリヌス毒素を出す菌として知られています。

特徴としては嫌気性といい、空気の無い環境を好んで繁殖。

真空パックのような酸素に触れない状況を好みます。

さらに好塩性なので塩にも強く、塩分を気にしてむやみに塩を控えると繁殖を招く恐れがあります。

土壌や野菜の表面など、自然界に広く生息しているので接触を避けるのは難しいですが、有害なのはあくまで生成するボツリヌス毒素なので、ボツリヌス菌自体との接触で害が出ることはありません。

ただし、ボツリヌス菌が芽胞(がほう)と呼ばれる防御態勢入ると殺菌は難しく、120℃を4分以上持続させなければいけません。

過去に起こった中毒例

ボツリヌス菌の中毒例は世界中で確認されており、

ヨーロッパではウインナーやソーセージを乳酸発酵させるプロセスでボツリヌス菌が混入する事例や、

日本ではいずし(魚の麹漬け)や真空パックの辛子レンコンなどでの例が報告されていました。

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他にも、殺菌処理の甘かった缶詰めや瓶詰め食品で確認されており、詰め物や落し蓋で空気に触れない嫌気性での環境下で発生しています。

ボツリヌス菌の対策

さいわい、害の原因であるボツリヌス毒素は80℃で30分、100℃10分で無毒化されます。

そのため摂食前にしっかり加熱することで無毒化できます。

また、保存食の塩分をむやみに控えずしっかりと塩分濃度を確保することが必要です。

例えば味噌の場合、塩分濃度は約12~13%と高く、好塩性とはいえボツリヌス菌にとってとても厳しい環境です。

さらに、ボツリヌス菌は酸性に弱く、pH5以下では生育できません。

このように、味噌の場合は塩分と酸度のダブル効果でボツリヌス菌を抑えるので、正しい作り方を心がければ心配いりません。

赤ちゃんにハチミツがNGな理由

ボツリヌス菌自体は毒性を持たず、摂食しても人間の腸内にいる菌に淘汰されます。

しかし、腸内菌の環境が充分に整っていない1歳未満の赤ちゃんだと、腸内でボツリヌス菌が繁殖してしまう場合があります。

赤ちゃんにハチミツを食べさせていけない理由はこのためです。

ハチミツの中にはボツリヌス菌が混入している場合があります。

ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから。

厚生労働省HPより引用

ボツリヌス菌のポイント…

  • 地上最強の毒素を出す
  • 芽胞を形成して熱に強い

対策…

  • 嫌気性なので、詰め物・真空パックでの保存に注意
  • 毒素は80℃で30分、100℃10分で無毒化
  • むやみに塩分濃度を下げない

注意したい食品…

  • いずしなど、魚の麹漬け
  • 家庭で行う真空パックでの食品保存
  • ウインナー・ソーセージなど伝統的な発酵畜産食品
  • ハチミツ(1歳未満の赤ちゃんに対して)

黄色ブドウ球菌

黄色ブドウ球菌も菌が出すエンテロトキシンという毒素によって、食中毒を引き起こす可能性を持つ菌です。

黄色ブドウ球菌の特徴

黄色ブドウ球菌は表皮常在菌、つまり我々の皮膚に常にいて、完全に殺菌するのが難しい菌のひとつです。

別名日和見菌とも呼ばれ、健康であれば他の菌の繁殖を寄せ付けない有益な働きをする一方で、

一度不健康になって悪性の雑菌が増えると一気にそちらに加担して肌荒れ・ニキビなどの原因となる態度がコロコロと変わる菌です。


こちらもボツリヌス菌と同様に好塩性で塩に強く、しっかりと塩分濃度が確保された環境でなければ繁殖する隙を与えてしまいます。

過去に起こった中毒例

皮膚に常に存在する菌ですので、過去には包丁で指を切ったまま調理を行ったため、傷口の血液を介して摂食前の食品に混入した事例が報告されています。

黄色ブドウ球菌の対策

まずは、手洗いによって接触機会を減らすことが第一です。

そして、包丁で指を切ったまま調理をしない・(化膿など)ケガした手のまま食べものに触れないというちょっとした注意で危険は回避できます。

また、食品を低温に保つことで菌の繁殖は抑えられます。

そのため食材は7℃以下の冷蔵庫で管理します。

黄色ブドウ球菌のポイント…

  • 人間の皮膚に普通にいる表皮常在菌
  • 有益な時もあれば有害な時もある、またの名を日和見菌

対策…

  • 手洗い・消毒で接触機会を減らす
  • ケガをした手で食品に触らない
  • 7℃以下の低温管理

注意したい食品…

  • おにぎり・お弁当など
  • 素手で仕込む味噌や漬物
  • その他、手に触れて調理する食品全般

感染タイプ

感染するタイプは、食品内で増殖した微生物を摂食することで発生します。

代表例としてはサルモネラ菌ウェルシュ菌腸炎ビブリオなどがあります。

近年ではごく少量でも中毒症状が出るO-157やカンピロバクターなどもこの種類ですが、基本の対策は一緒です。

サルモネラ菌

生肉、生魚、生野菜など、生食時に多く症例が見られるのがサルモネラ菌です。

とりわけ鶏・豚・牛などの生肉に多く、レバ刺しが禁止された原因のひとつの菌といえばピンとくるかもしれません。

サルモネラ菌の特徴

サルモネラ菌は自然界にごく普通に生息していて、生息する範囲は広く、生肉・生魚・野菜などいたるところに潜んでいます。

近年では畜産業の衛生管理の向上でサルモネラ菌の低減化対策が行われていますが、それでも個人が調理をする際には注意が必要です。

時には1万個に1個くらいの確立で、ごく稀に卵管を通って生卵の中に入り込む場合もあります。

過去に起こった中毒例

焼肉やバーべキューでしっかり火が通っていない肉を食べた、生肉を触った調理器具から菌が繁殖したといった、サルモネラ菌による中毒例は一般的に多く報告されています。

サルモネラ菌の対策

先の黄色ブドウ球菌同様に、まずは菌を増やさないよう食材は冷蔵管理します。

特に生肉は注意が必要です。

サルモネラ菌は75℃で15秒以上の加熱で死滅するので推奨されています。

生肉を触る取り箸やトングは別にして、中心部分まで火が入ったかを確認します。

O-157やカンピロバクターもこの温度で死滅しますので必ず守りましょう

包丁・まな板は肉用・野菜用で分けるのも効果的です。

生卵も冷蔵保管し、割った生卵を放置しないで早いうちに使い切ります

サルモネラ菌のポイント…

  • 生の食材、特に生肉に多く潜んでいる

対策…

  • 冷蔵管理で増殖させない
  • 75℃1分以上の加熱で死滅
  • 生肉の取り箸やトングは別に分ける
  • 割った生卵はすぐに使う

注意したい食品…

  • 生食または低温調理の食品全般
  • 生卵

腸炎ビブリオ

好塩性で塩に強く、生魚など魚介類に多いのが腸炎ビブリオです。

腸炎ビブリオの特徴

腸炎ビブリオは海水と同じ塩分濃度3~4%の環境を好み、活発に増殖します。

そのため海水中に広く生息していて、魚介類の表面や体内にも入り込んでいる菌です。

さらに、繁殖スピードが早く、サルモネラ菌の倍のスピードで増殖する特徴もあります。

過去に起こった中毒例

過去には減塩目的で塩を減らしたイカの塩辛で食中毒の発生が確認されました。

通常イカの塩辛は塩分が10%以上ですが、症状の出た塩辛は4%と腸炎ビブリオが繁殖しやすい濃度であったことが分かっています。

腸炎ビブリオの対策

塩水を好む腸炎ビブリオは、真水に触れると浸透圧により細胞膜が破裂して死滅します。

そのため、生の魚介類は水道水などの清潔な真水でしっかり洗うことで撃退できます。

また、繁殖スピードは早いのですが、低温で増殖を抑えられるのは他の菌と一緒です。

そのため持ち運びや保管には氷袋などでしっかり冷やすようにしましょう。


腸炎ビブリオのポイント…

  • 海水と同じ塩分濃度3~4%の環境を好む
  • 繁殖スピードが早い
  • 保存食でも、むやみに減塩すると繁殖する恐れがある

対策…

  • 清潔な真水で洗うことで死滅する
  • 低温保管で繁殖を抑える

注意したい食品…

  • イカの塩辛
  • 魚の一夜干し
  • その他漬物類
魚を捌く時は真水?塩水?食中毒を防ぐ正しい洗い方 以前、塩振りについて記事にまとめました。 https://jitakuseigiku.com/siohuri/ 塩振りは熱...

ウェルシュ菌


ウェルシュ菌は本文冒頭のボツリヌス菌と似ていて、土壌など自然界に広く生息しており、芽胞を形成して100℃・1時間でも死滅しない耐熱性を持った菌です。

ウェルシュ菌の特徴

細かい種類はありますが、ウェルシュ菌はいわゆる腸内悪玉菌のひとつなので、土壌の他にも生肉にも付着していることがあります。

また、嫌気性で酸素の少ない環境を好むのも似ています。

熱に強く、50℃から繁殖し始めるので、加熱調理後に料理を冷ます時に繁殖しやすいのが特徴です。

過去に起こった中毒例

代表的な例だと、寸胴鍋で作ったカレーの中で繁殖してしまうことが挙げられます。

調理後に火を止めてゆっくりと放冷する際に繁殖、さらに寸胴鍋の中は空気が入りづらく、嫌気性の菌にとって適した環境です。

ウェルシュ菌の対策

まずは侵入経路である野菜の泥はしっかりと洗い落とすのが重要です。

ウェルシュ菌は50℃位の温度を好みますので、加熱調理後は2時間以内に20℃以下に急冷するようにします。

カレーや鍋物などを保存する際にはタッパーなどで小分けにして、あえて空気と触れる面を作って嫌気性の反対、好気性の環境を作ってやるとウェルシュ菌の繁殖を妨げることができます。

また、加熱食品中のウェルシュ菌はpHなどの関係により芽胞を形成していない場合も多いので、カレーや鍋物を食べる前に15分以上加熱することでウェルシュ菌を死滅させることができます。

ウェルシュ菌のポイント…

  • 土壌や生肉に多く見られる
  • 芽胞を作り、熱に強い
  • 嫌気性で、酸素のないところで繁殖
  • 50℃くらいから活発に繁殖を始める

対策…

  • 野菜の泥をしっかり落とす
  • カレーや鍋を保存する際は急冷して小分けにする
  • 食べる前に15分以上加熱する

注意したい食品…

  • カレー、シチュー、その他の鍋物
  • 甘酒やヨーグルトなど、40~50℃で保温する発酵食

番外編

納豆菌

最後は納豆菌です。

納豆菌は有益な菌ですが、あなどるなかれ、場合によっては厄介な存在に変わります。

納豆菌の特徴


家庭で発酵食を作るのに一番気をつけたい菌が納豆菌です。

まず、熱に強くて121℃で20分以上加熱しないと死滅しません

また、酸にも強くpH1~2もある胃酸にも耐えられます。

過程で混入しやすい菌

家庭だとパックの納豆を日常的に食べることも多く、納豆を食べた後の手・口・道具を介して食品に入り込む可能性が高い菌です。

家庭で作る麹に紛れ込むとスベリ麹といってぬるぬるとして味と香りの悪い麹が出来上がることがあります。

そのため麹屋さんはもちろんのこと、日本酒・焼酎・醤油・味噌などを作る会社では製造期には納豆を禁止するところが多いです。

納豆がタブーとされる理由は?蔵人は納豆を食べてはいけない話 こんにちわ。スタコジ(@jitakuseigikuin)と申します。 麹を中心とした発酵食の情報を発信している麹ブロガーです。 ...

納豆菌自体は有益な菌ですが、他の発酵食に混入することで影響を及ぼすこともあるとてもタフな菌なので、発酵食好きには注意していただきたい菌です。

納豆菌のポイント…

  • 121℃で20分以上でないと死なない
  • 酸に強く、胃酸にも耐えられる
  • 日常的に納豆を食べることも多く、家庭で混入しやすい菌
  • 麹に混入するとスベリ麹になる

注意したい食品…

  • 自作の麹
  • その他ヨーグルト、甘酒、塩麹など


私も過去に納豆菌にやられました。

その時の詳細はこちらをご参考ください↓

栗で麹を作ったら納豆菌にやられて大失敗した話【納豆菌対策も考察】 秋ですね。 栗の初物が出てきました。 そんな秋の始まりにいきなり出鼻を挫くようで恐縮ですが、 今回は栗で麹を作ろうと...

まとめ

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

私は日本酒を作る蔵人という仕事に就いて、色々な菌の世話をしています。

菌を元気に育てることでおいしくて有益な発酵食が出来上がりますが、菌を育てるのと同じくらい、菌を排除することも重要です

特に今回挙げた菌は食中毒を引き起こすものがメイン(納豆菌を除く)で、場合によっては命に関わります。

基本である手洗い・道具の清潔はもちろんのこと、もう一歩踏み込んでよりくわしく知ることで食中奥のリスクは減らせます。

この記事が安全に発酵食を楽しくために少しでも役立てば嬉しいです。

自家製は危険?初心者におすすめできない発酵食3選 この記事の結論… 発酵食品の中には、家庭で作るにはおすすめできないものがあります。それは以下の3つです。 畜産発酵食品(...

参考文献…

ボツリヌス菌について 厚生労働省検疫所FORTH

主な食中毒起因細菌の食品中における増殖について 伊藤武・坂井千三食衛誌.Vol.30,No.2

サルモネラ感染症とは 国立感染症研究所

たべもの安全情報館、ウェルシュ菌 東京都福祉保健局

塩蔵食品の過去・現在:塩蔵食品の特性の変化と細菌汚染と食中毒リスク 中口義次 日本海水学会誌.第72巻.第5号(2018)

・絵でわかる食中毒の知識 伊藤武