自家製は危険?自家製に向かない発酵食3選【安全に発酵食を楽しむヒント】

微生物の関わる発酵は、時に思いもよらない結果を招くことがあります。
思いもよらないとは、腐敗や食中毒のことです。
例えば味噌などは塩の殺菌力を利用することで比較的安全に作ることができますが、発酵食の中には家庭で作るには向かない発酵食もいくつかあります。
この記事では自家製に向かない発酵食とその理由について紹介いたします。
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初心者におすすめできない発酵食①:ウインナー・ソーセージなど畜産発酵食品

伝統的な製法のソーセージやウインナーは乳酸発酵を伴います。
伝統的な製法だと、プランタム属・カゼイ属・ラクトバチルス属の乳酸菌が乳酸を生成、pHを下げて食品の安全性を高めてくれるのですが、家庭ではおすすめできません。
なぜなら乳酸菌の好む30℃前後の温度帯は他の有害な菌にとっても好ましい温度帯だからです。
そのため、ボツリヌス菌など非常に強い毒素を生成する菌が混入する可能性があり、長い歴史の中でも強毒による事故は多数報告されています。
最大の難点は見た目からの分かりづらさ

ソーセージ類の最大の難点は、見た目からは安全かどうかが分かりづらい点にあります。
もしも有害な菌が繁殖したとしても、ミンチ部分が腸詰めにされてるので見た目で判断するのが難しいのです。
また、肉の匂い消しにハーブやスパイスが使われることが多く、腐敗による異臭が出ても臭いがマスキングされるので異常に気づきづらくなります。
そのため市販されてるソーセージ類は、食品衛生法によりボツリヌス菌などの有害菌を抑制する亜硝酸ナトリウムの添加が義務付けられているほど、食中毒に対しての配慮がされています。
特に、ボツリヌス菌は地上最強の毒素を出す菌として知られています。
しかし、正しい対策を知っておけばまず大丈夫です。
詳しくはこちらの記事もご参考ください↓

初心者におすすめできない発酵食②:魚醤・鮒ずしなど水産発酵食品


水産発酵食品も初心者にはおすすめできません。
魚醤:シンプルに臭い
例えば、いわしやアジなどの小魚を長期間塩漬けにしたものを魚醤といいます。
日本ではしょっつる、タイではナンプラーなどが有名です。
魚の内臓の分解酵素を働かせて、魚自身をドロドロの半固形物にしていきます。
そのため魚の内臓ごと仕込むので、シンプルに臭いです。
強烈なにおいを覚悟しなければいけません。ホントに臭いですよ。
塩に耐性のある菌の繁殖
また、塩分を気にして塩を減らしたり、よく混ぜずに塩分が不均一だと、腸炎ビブリオなどの耐塩性の有害菌が繁殖する恐れもあります。
これは発酵食に限らず、手作りの塩辛や一夜干しなどの一般料理にも言えますので、塩分を気にして塩を減らすのはおすすめできません。
塩の殺菌効果が半減してしまうからです。



鮒ずし:高度な発酵プロセス


鮒ずしも特徴的なにおいを持つ水産発酵食品ですが、もっとも特徴があるのは独自の発酵プロセスです。
どちらも嫌気性菌・乳酸菌が高度に絡みあった発酵が進むことで、食品としての安全性が保たれています。
正直、初心者が家庭で真似するにはかなり難しいです。
滋賀県内で受けられる鮒ずしの講習会
それでも挑戦してみたいという方は、プロによる指南を受けるのをおすすめします。
鮒ずしの産地である滋賀県では県内の漁協が主催する鮒ずし作りの講習会が開かれています。
興味のある方は下記リンクからどうぞ。
滋賀県漁業協同組合連合会HPより
初心者におすすめできない発酵食③:自然菌を種菌にする納豆や麹


藁に住み着く納豆菌から納豆、稲にできる稲麹から麹を作るといった、自然界の菌を種菌にするのもおすすめできません。
菌の混入が起こりやすい
藁や稲麹には納豆菌や麹菌以外にも自然界にいる菌が含まれます。
そのため目的の菌以外の菌を培養してしまい、食中毒につながる恐れが出てきます。
種菌の安全性・再現性を確保するには専門の培養・分離技術が必要ですので、
納豆や麹を作る際はかならず純粋培養された納豆菌・麹菌を使いましょう。




種菌の使い回しもNG
友麹法の記事でも紹介しましたが、
ヨーグルトを家庭で作る際にヨーグルト種を何度も使い回していると、だんだんと固まらなくなってきますよね。



あれは何度も種菌を使い回してるうちに雑菌が混入し、ヨーグルトに必要な乳酸菌が弱くなっていくためです。
種菌の2度・3度の使い回しも菌の変質につながるのでおすすめはできません。
まとめ


今回紹介した自家製に向かない発酵食品はこの3つです。
この記事で取りあげた3つの食品に限らず、発酵食品には安全性と再現性がとても重要です。
微生物の働きの解明が進んできた現在では、昔と比べて安全性は飛躍的に向上しました。
それでも腐敗や食中毒に対する配慮はできる限りするべきなのは言うまでもありません。
そのためには発酵食のいい面だけでなく危険な面も知ることが、楽しく発酵食を続けていくことにつながります。
この記事が読んでくださった方のヒントや疑問の解決になればうれしいです。












