栗で麹を作ったら納豆菌にやられて大失敗した話【納豆菌対策も考察】

秋ですね。
栗の初物が出てきました。
そんな秋の始まりにいきなり出鼻を挫くようで恐縮ですが、
今回は栗で麹を作ろうとして大失敗した話です。
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栗麹を作ろうと思った経緯
振り返れば、最初はちょっとした思いつきでした。
そういえば、お米以外で麹を作ったことないなぁ。。。
そうなんです。
かれこれ10年以上日本酒の酒蔵で働いて沢山麹を作らせてもらいましたが、米以外で麹をつくったことがほぼ無いのに気づきました。
それでやってみたんです。栗麹。

結果、大失敗(ノД`)・゜・。
結果、納豆菌が繁殖して大失敗でした。

白く見えてるのは麹菌でなく納豆菌。
触ると納豆特有の粘りが指にまとわりつきます。

何が起こったのか分からず、一瞬フリーズしてしまいました。
納豆菌に汚染された「スベリ麹」
納豆菌に麹が汚染されることは酒屋や麹屋さんでも稀にあるようで、ぬるぬると糸を引くのでスベリ麹と呼ばれ、避けるべき事態だとされています。
…でも正直、実際にスベリ麹が出たとか触ったなんて話を聞いたことなく、けっこう都市伝説的な話の様にどこか思ってました。
少なくとも、私は今回初めてスベリ麹の実物を見ました…
【参考】蔵人は納豆を食べられない? お酒と納豆菌の関係って?
なぜ今回栗の麹を作ろうとしたらスベリ麹になったのか。
相手は目に見えない菌なのであくまで憶測の域は超えませんが、
私なりに考察して原因を突き止め、同じ失敗を繰り返さない教訓としたいと思います。
二度と同じ過ちは繰り返すまい…!
また、麹に限らず発酵食にとって納豆菌は時に非常に厄介な存在です。
今回のことが家で発酵食を楽しまれる方の納豆菌対策の参考になればうれしく思います。
栗麹がスベリ麹になるまで
まずはスベリ麹が発覚までの経緯をおさらいします。
栗を一晩水に浸ける

栗はまず水に一晩浸けて浮いてきたものをはじきます。
浮いてくるものは虫食いであるためです。
鬼皮と渋皮を剥く
次に包丁で鬼皮・渋皮の順に剥いてきます。


外側の鬼皮は栗の平たい部分を少し切って、包丁の腹で抑えつつベロンと。

内側の渋皮は面取りの要領で地道に剥いてきます。
蒸して種切り
鍋に湯を沸かして蒸し器をセットし、強火で50分蒸します。

蒸し布で隠れてますが、蒸し器はこういうタイプです↓
蒸し上がったらバットにあけ、適当な大きさに砕きながら冷まして、人肌に冷めた所で種切り。

無論、栗用の種麹なんてありませんので麹屋三左衛門さんの米麹用種麹を使用しました。
種切りが終わったらいつものヨーグルトメーカーで33℃保温。
【参考】お手軽+日中家を空けてもOK。ヨーグルトメーカーで麹を自作【スケジュールも一覧にして紹介】

12時間後、床もみ
種切りから12時間経って、床もみの工程へ。

ちょっと表面にポツポツと来てる?ようにも見えますが、この時触った感じは粘りもなく、穀物特有のポソポソとした感触だったので、
栗が少し崩れて玉っぽくなってるだろうな。
…くらいに思ってました。
24時間後に事件は起きる…!
種切りから24時間後、事件は起きました。
切り返しでヨーグルトメーカーから取り出してみると…

え?? 白くなりすぎじゃね???
米麹だとこのタイミングでこんなに麹菌が繁殖することはまずありません。
もっとポツポツと、白い斑点が米の表面によく見て確認できる程度です。
恐る恐る触ってみると…お伝えした通り、、、
あ゛あ゛あ゛ああぁ!!! スベリ麹だぁーーー!!!!!!!
・・・ここでスベリ麹が発覚したというのが事の顛末です。
容疑①:道具に納豆菌が付着していた?
ここからは推察に入ります。
一体どこで栗に納豆菌が混入したのでしょうか?
まずは道具からの侵入を考えてみます。
まず怪しいのは栗が直接触れるヨーグルトメーカーの容器やバットなどの道具類ですが、中性洗剤で洗う→煮沸消毒→しっかり乾かしてるのでその可能性はあまり考えられません。

フタの溝など、前の食材が残りやすい部分もちゃんと確認済みです。
道具からの侵入はちょっと考えられません。
容疑②:人に納豆菌がついていた?
では、人間に納豆菌がついてたらどうでしょうか?
種切りと床もみは人の手が直接触れるので、そこに納豆菌がいたら容易に侵入することができます。
その可能性は…残念ながら考えられません。
この時、自宅の冷蔵庫に納豆はありませんでした。
外で納豆を食べてきたということもないです。
私は自宅でも仕事でも、麹を作る期間は公私ともに納豆を食べないことにしています。
もちろん、麹に手を入れる直前に手洗い石鹸とアルコールでしっかり消毒してから触ります。
容疑③:栗に納豆菌が付着した?
一度視点を変えて考えてみましょう。
納豆菌が目視できるほど繁殖するのには、早くて10時間~12時間くらいかかるそうです。
そうなると、種切りから12時間後に見えたポツポツが納豆菌だとしたら、少なくとも蒸して種切りをした段階ではすでに納豆菌に侵入されていたことになります。

こうなるとひとつの疑問が私の頭をよぎります。
もしかして、蒸しの時にしっかり殺菌できてなかったんじゃないだろうか…?
容疑④:蒸す時に殺菌できてなかった?
納豆菌は熱に強く、
納豆菌を完全に殺菌するには121℃を20分維持する必要があると言われています。
そうすると、水の沸点は100℃なので鍋で沸かした蒸気くらいでは明らかに不十分です。

つまり、納豆菌は蒸す前からすでに栗に侵入していたと考えると辻褄が合います。
結論
以上のことから導かれる結論は、
自然界にいた納豆菌が栗に侵入していた
ということになります。
納豆菌は枯草菌という菌の仲間で、土壌や木の表面など自然界の至るところに生息している菌なので、栗に最初からいたとしても全く不思議はありません。
そう考えると、あれも良くなかったんでしょうね。

虫食いを見分ける為、一晩水に浸けた工程です。
これで更に納豆菌が水を介して鬼皮の隙間から入り込み、栗の内側まで浸透する手助けになっていたと推測できます。
ようやくひとつの結論に至りました。。。
スベリ麹の再発を防ぐには?
納豆菌自体はアルコール・次亜塩素酸・逆性石けんなどが殺菌には有効です。
道具の殺菌にはこれらも有効ですが、食材に対してだとアルコールや次亜塩素で浸けるわけにもいきませんし、殺菌する方法はかなり限られます。
というか、ひとつしかありません。
121℃を20分キープするしかありません。
蒸気は圧力が加わると水の沸点である100℃を超えて、100℃以上の高温になる性質があります。
家庭用の圧力鍋なら、圧力を強めれば約120℃くらいまで温度を上げることが可能ですので、これでなんとかイケないだろうか…
そう考えがら、次回の栗麹に向けて準備中です。

最後までお付き合い頂きありがとうございました。
麹を自作される方のスベリ麹防止にこの記事が役立てば幸いです。



