酒器でお酒の味が変わる?すぐに試せる酒器の話

器ひとつでお酒の味は変わります。
私自身も酒飲みなので、たまに好みの味でないお酒を引き当ててがっかりすることがありますが…
そんな時は酒器を変えると自分の好みの味に寄せることが可能です。
断言できますが、酒器を変えればお酒のおいしさも変えられます。
この記事では、どなたでも試せるように厳選した酒器3種類+番外編の計4種類を紹介します。
そしてこの記事を読むことで、酒器の使い分けでお酒を自分好みに変化させ、よりおいしく飲むコツが分かります。
酒器と言っても骨董品のような高価なものではなくて大丈夫です。
▼▼▼▼▼この記事を書いた人▼▼▼▼▼
当ブログの運営者・スタコジ(@jitakuseigikuin)と申します。
本業は造り酒屋で日本酒製造に関わる蔵人(くらびと)。
官能検査法の理論・実技を習得したきき酒マイスター(日本醸造協会)にも合格しました。
結論からお伝えしますと、
- ワイングラス
- ぐい呑み
- 平杯(ひらはい)
この3種類があればOKです。
オススメの酒器も紹介しますが、まずは身近にある似た形のグラスで試してみてください。
ワイングラス…香りが立ち、味わいが繊細になる
まずは酒器の代表格とも言えるワイングラスです。
ワイングラスの一番の特徴は、先がすぼまった飲み口にあります。

器の飲み口部分がすぼまっていると、お酒の香り成分が揮発せず器の中に留まるので、香りを強く感じやすくなります。
また、飲み口が薄く、唇に触れる面積が少ないと意識がお酒に向き、味わいをより繊細に感じるようになります。
香りと味わいを鋭敏に感じられる点から、酒造メーカーによっては品質のチェックにワイングラスが採用されてる所もあるぐらいです。
活用法としては、
「もっと香りを楽しみたい」
「味をハッキリと感じたい」
といった時にワイングラスで飲んでみることをオススメします。
酒器に相性の良い日本酒のタイプは「大吟醸」「純米大吟醸」であったり、香りの良さをアピールしている商品などが良いでしょう。
オススメのワイングラス

リーデル社は250年の歴史あるオーストリアの企業ですが、実は大吟醸向けのグラスが発売されています。
最近では純米酒用グラスもリリースされ、こちらは香りだけでなく味わいも楽しめる設計です。

私も純米酒用を一脚持っていますが、日本酒のわずかな味や香りも敏感に感じられるので、ちょっと感動モノです。
ぐい吞み…香りが落ち着き、味わいが柔らかくなる
ぐい呑みとは、お猪口よりかは少し大きめのサイズの酒器のことです。
ぐい呑みがお家に無い場合は、お猪口や湯呑みでも代用できます。

ぐい吞みの特徴は、飲み口がすぼまっておらず解放されてるので、香りの感じ方が穏やかになります。
また、先に紹介したワイングラスと比べると飲み口に厚みがあり、唇から感じる意識が酒器に向きやすいので、味わいは柔らかく感じられます。
活用例として、
「ちょっと香りが強いな」
「味が強いから、もっとやさしくしたいな」
なんて時にオススメです。
日本酒のタイプは「純米酒」「本醸造」などが相性が良い傾向にあります。
先のワイングラスとはちょうど正反対の効果、というイメージです。
オススメのぐい吞み

富山県にある株式会社 能作では、錫(すず)製の酒器を製造・販売されてます。
錫から発せられる錫イオンが、お酒の揮発成分(フーゼル油)を溶かす効果があるとされており、味わいがよりまろやかになると言われています。
手にしてみると、皮膚に吸い着くような質感があって持ちやすく、じっくりとお酒を楽しみたい時にもオススメです。
平杯(ひらはい)…空気に広く触れ、香りと味が最も穏やかになる
最後の三つ目が平杯という酒器です。
時代劇などで武将が薄く平たい器でお酒の飲むシーンなど見たことありませんか?
そうです。あれが平杯です。

平杯の大きな特徴はその薄さと平べったさにあります。
平べったい器にお酒を注ぐと、必ずお酒と空気が触れる面積が広くなります。
この時、お酒は酸化という劣化現象がおきるのですが、酸化はごく短い間であればお酒の味をまろさかにしてくれるプラスの要因として働きます。
ワインのデキャンタージュと同じ理屈です。
更に、口に運ぶまでにこぼれないよう注意が必要で、ゴクゴクと飲むことはできません。必ず少量ずつ口に入るので、味わいが最も柔らかく感じます。
また、口もすぼんでいないので、香りだけでなくアルコールの刺激臭も感じづらくなります。
そのため、アルコールの揮発を感じやすい燗酒に向いています。
活用例として、
「香りは極力抑えたい」
「味も柔らかくしたい」
「お燗してゆるゆると飲みたい」
という場合にオススメの酒器です。
オススメの平杯

オススメの平杯は、鳥取県の梅津酒造から出されてる平杯です。
値段もかなり手頃であり、梅津酒造さん自体も濃淳でお燗向きのお酒を造られておられるので、ぜひお酒とセットで楽しみたい杯です。
番外編 可杯(べくはい)…オススメはしません
最後に番外編です。
土佐(今の高知県)のお座敷の席が発祥と言われる可杯(べくはい)を紹介します。

可杯の特徴は2つ。
- 机に置けない形…注がれたら飲み干さないといけない
- 器に穴が空いている…注がれたら飲み干さないといけない(2回目)
というトンデモな酒器が存在するのです。
詳しく解説してきます。
可杯には「おかめ」「ひょっとこ」「天狗」の3枚の器と、この3つの絵が描かれた独楽(こま)1個の計4つで1セットという珍しい酒器です。
特徴にも書きましたが、お酒を注がれたら必ずに飲み干さないといけない形状の酒器です。
可杯については中川政七商店の記事で詳しく紹介されてますので、もっと詳しく知りたい方用にリンクを張っておきます。
これがお酒の味を変えるのにどういう風に役立つかというと、
味が気になる前に飲み干してしまうことができます。(非推奨)
というのは冗談で、酒器にはこういうものもあるんだよー、というのを言いたくて紹介させてもらいました。
楽しい宴席で程々に使うには良いですがくれぐれも飲みすぎにご注意下さい。
まとめ

日本酒ブームを皮切りに多種多様のお酒が販売されるようになり、時には自分の好みとはちょっと違うお酒と出会うこともあるかもしれません。
しかし、そこで「好みじゃなかった」と見切りをつけるのは少しもったいないと思います。
ちょっとした工夫で、好みでなかったお酒もおいしく飲めるようになるかもしれません。
今回はそのひとつの手法として、酒器について解説させていただきました。
読まれた方の楽しくおいしいお酒ライフの参考になれば幸いです。