味噌は常温保存できる?味噌の熟成と保存方法を解説
味噌は常温で仕込み、常温で熟成させます。
なので味噌は基本的に常温保存が可能です。
ただし、あくまで基本的に、です。
数ある味噌の中でも
- 生味噌
- 減塩味噌
- ダシ入り味噌
などは冷蔵保存のほうがいいでしょう。
また、どんな味噌も常温で置くと必ず熟成が進みます。
今回は
- 常温保存のポイント
- 味噌の熟成とは
について解説いたします。
味噌をおいしく食べるには保存方法も重要です。
せっかくなら味噌の保存方法について知り、
おいしく安全なお味噌ライフにぜひお役立てください!
▼▼▼この記事を書いた人▼▼▼
結論:味噌は常温でも保存できる
冒頭でもお伝えしたように、
味噌は常温保存が可能です。
もともと常温で発酵・熟成させるので、
カビや雑菌などに注意しておけば常温で置いていても問題ありません。
ただし、くりかえしますが、
常温に向かないタイプもいくつかあります。
冷蔵が必要なタイプはこちらから飛べます↓
常温保存のポイント
常温で保存するには以下の点に注目すると、
カビや熟成の進みすぎを防ぐことができます。
減塩タイプの味噌ではないこと
味噌の塩分濃度は約10%~約12%ほどです。
減塩タイプの味噌だとさらに塩分濃度が低くされていますが、あまりに塩分濃度が低いとカビなどの雑菌が生える原因になります。
菌の繁殖を抑えるには冷蔵が必須ですので、
常温で置きたい場合は適切な塩分濃度があるか確認しておきましょう。
「減塩」と書かれている味噌は冷蔵が無難です。
密閉されていること
雑菌は空気中なら混入します。
そのため味噌の保存の際は空気を抜き、しっかり密閉してしまうようにしてください。
ジップロックに小分けにすると便利です。
通常の容器に保存する場合は、容器のフチをこまめに拭いて、食品用アルコールで消毒しておくとカビなどを防げます。
熟成が進んでも問題ない
ストレートに言います。
— 自宅製麹員 (@jitakuseigikuin) February 6, 2022
2年前に仕込んだ味噌がいま、最高に熟してるのでぜひ見てやってください。 pic.twitter.com/nMghCFZhD2
どんな味噌でも、常温だと必ず熟成が進みます。
味噌には発酵を止めるため、
- 酒精(アルコール)を添加したもの
→酵母菌の繁殖を止める - 加熱処理したもの
→酵素の働きを止める
があります。
しかし、酵母菌や酵素を止めても
味噌自体の熟成(メイラード反応)はゆっくりと進むため、味噌はだんだんと黒く色づき、香りも重厚さを増してきます。
長期間常温保存した味噌がこちら↓
キッチンの奥から10年以上前に初めて仕込んだ味噌が出てきた。。。
— 自宅製麹員 (@jitakuseigikuin) March 14, 2022
忘れてました、ゴメンナサイ((((;゚Д゚))))
豆鼓、甜麺醤っぽいこっくり系の香り。ほんのり酸味。
みりんと砂糖でのばして甜麺醤にしようかな。 pic.twitter.com/dK5GyNKmiT
そのため熟成を進ませたくない場合は
常温保存はせず、冷蔵保存がおすすめです。
常温保存に向かないタイプの味噌
先に常温保存に向かないタイプを紹介しておきます。
次のようなタイプの味噌は冷蔵が必要です↓
①:生味噌
生味噌とは味噌に含まれる分解酵素がまだ活きてるタイプの味噌のことです。
味噌の仕込みで使われる麹は分解酵素をたくさん持ち、大豆のタンパク質をうま味成分であるアミノ酸に分解します。
酵素が活きてるとタンパク質の分解が進み、
味が変化していくので、冷蔵保存で変化を遅らせる必要があります。
酵素についてはこちらをどうぞ↓
分解酵素はゆっくりと味噌の味に作用します。
スーパーでよく「生味噌」と書いてる商品が常温陳列されてることがありますが、それにより数日のうちに大きく変わることは無いのでご安心ください。
配達時も常温で送られることも。
生味噌でもその程度なら問題ありません。
数週間~数か月と
長期で保存する場合は冷蔵をおすすめします。
②:減塩タイプの味噌
味噌には塩分を減らした減塩タイプがあります。
減塩したい人にはうれしいですが、
塩分が低いとカビなど雑菌に汚染されるリスクが高まります。
そのため減塩タイプの味噌は冷蔵保存がおすすめです。
③:ダシなどが添加された味噌
そのままお味噌汁に使えるダシ入り味噌も冷蔵がおすすめです。
ダシとして入れられているカツオエキス・昆布エキスの香りの劣化を防ぎます。
ダシが入るぶん、塩分が低くなっていることもあるので、やはり冷蔵が無難です。
味噌の熟成ってなに?
味噌は常温で仕込み、常温で発酵・熟成させます。
そのため
・適切な塩分濃度
・適切な保存方法(密閉)
があれば常温保存は可能です。
つまるところ、
「味噌を熟成させたくないなら冷蔵保存」
と覚えてもらえればOKです。
しかし、中には
味噌の熟成ってなに?
発酵とはちがうの?
とギモンに思われる方もいらっしゃるでしょう。
ここからは味噌の熟成について触れておきます。
味噌の熟成の3要因
味噌の熟成には3つの要因があります。
それが、
です。
すべて覚える必要はありませんが、
自家製味噌を作る人にとってはおいしい味噌作りの参考になります。
専門的な要素も分かりやすく解説してますので、
よかったら読んでいってください↓
味噌の熟成①:微生物
麹や空気中を経由して、味噌には微生物が入り込みます。
とりわけ味噌に影響を与えるのが乳酸菌と酵母菌です。
乳酸菌
主に
・Lactococcus lactis
(ラクトコッカス ラクチス)
・Tetragenococcus
(テトラジェノコッカス)
という乳酸菌が味噌で繁殖します。
生産する乳酸により
味噌に爽やかな酸味を与えるほか、
酸性よって雑菌の繁殖を抑える働きをしてくれます。
酵母菌
・Zygosaccharomyces
(チゴサッカロミセス・ルキシー)
・Candida
(キャンジダ)
といった塩分耐性のある酵母菌も味噌で繁殖します。
酵母菌は麹によって生産される糖(グルコース)を消費してアルコールを生成。
この際に
・高級アルコール
・エステル
などの香り成分が生成され、
味噌に複雑で芳醇な香りを与えます。
味噌に酒精(アルコール)を添加するのは、これらの菌の繁殖を止めるためです。
味噌の熟成②:麹の酵素
麹には分解酵素がたくさん含まれていて、
味噌の原料である大豆を分解していきます。
大豆のタンパク質をうま味成分であるアミノ酸に分解することで、味噌の味に深みが増し、コク深い味わいへと変化していきます。
酒精では酵素は止められないので、65℃以上に加熱して酵素を止めます。
そのため加熱していない生味噌は酵素がまだ働いているので、徐々に分解が進んでいきます。
味を変化させたいない場合は
冷蔵することで酵素の働きを抑えることが可能です。
味噌の熟成③:メイラード反応
最初は肌色に近い色だった大豆が、
熟成が進むにつれて褐色に色づいていきますよね?
あれがメイラード反応です。
味噌に含まれる糖質やアミノ酸が空気中の窒素と反応して、メラノイジンという抗酸化物質に変化します。
その際に褐色に色が変化する性質があるため、熟成が進むにつれて味噌の色はだんだん濃くなっていくのです。
メイラード反応は、酒精でも加熱でも止めることはできません。
メイラード反応は先述した微生物・酵素とは別の要因ですので、酒精添加や加熱をしても止めることはできず、徐々に進みます。
そのため熟成をストップさせるなら、
やはり冷蔵するのが一番です。
熟成を完全に止めたいなら冷凍を
厳密には冷蔵しても味噌の熟成はゆっくり進みます。
そのため味噌の熟成を完全に止めたい場合はより温度の低い冷凍保存がおすすめです。
まとめ:味噌の保存には温度が重要
味噌の保存には温度管理が重要です。
常温でおくことで
味噌の熟成を進めることができますし、
冷蔵すれば熟成を遅らせることができます。
このように熟成をコントロールして、
手作り味噌の味を決めるのに役立ちます。
手作り味噌をおいしく仕上げるのにはもちろん、市販の味噌をおいしい状態で保つのにも有効ですので、ぜひ活用してみてください。
手作り味噌に興味を持たれた方は
こちらもどうぞ↓
・味噌醸造に存在するバクテリオシン産生乳酸球菌(日本醸造協会誌第96巻第3号)
・ 味噌醸造業における技術開発の問題点(日本醸造協会誌第67巻第3号)
・味噌にアルコールが含まれている理由は? 酒精が添加される目的について(台所通信)
・清酒のにおい・香りとその由来(その1)(きた産業)