酒醸(チューニャン)とは?もち米で作る中国の甘酒の作り方・使い方
酒醸(チューニャン)はもち米と麹から作られる中華料理の調味料です。
エビチリなどによく使われ、料理にコクと甘味を加えます。
本場の製法ではクモノスカビの米麹・生薬の配合がされるようですが、日本でも手軽に入手できる材料で作ることが可能です。
ただし、本場のレシピのままだと雑菌汚染のリスクが非常に高いので、腐敗を避ける工夫が必要です。
この記事では、
以上の3点について紹介します。
また、本場の製造方法では1%以上のアルコールが出る可能性があり、日本国内では酒税法違反となる恐れがあります。
そうならないために、日本国内でも問題無く作れる代替レシピも合わせて紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
▼▼▼この記事を書いた人▼▼▼
原料の違い
甘酒が米と米麹で作られるのと同様に、酒醸の原料はもち米・米麹・水と非常にシンプルです。
冒頭でお伝えしたように調味料として使われるほか、
湯に溶いた酒醸に白玉団子を浮かべた酒醸圓子(ジュウニャンユアンズ…団子入り酒醸)というデザートにも用いられます。
酒葯(チュウヤオ)…団子状の麹
酒醸に使われる麹は日本の散麹(バラ麹…穀物の粒がほぐれてバラバラの状態)とは違い、餅麹(もち麹…挽いた穀物を団子状に成型してつくる麹)が主流です。
中国では酒葯(チュウヤオ、酒薬)と呼ばれています。
形状だけでなく麹菌の種類も日本の麹菌がアスペルギルス属なのに対し、餅麹の麹菌はリゾープス属のクモノスカビというのが一般的です。
水蓼(たで)・柳蓼の葉を混ぜたものを2cmほどの団子状に成型して作ります。
また、麹菌以外にモリニア属・サッカロマイセス属の酵母菌も混在していて、酵母菌のスターターとしての役割も持ちます。
クモノスカビの特徴
クモノスカビの麹は中国以外にもテンペ(インドネシア)・マッコリ(韓国)などアジア圏で広く使われる麹菌です。
特徴はリンゴ酸など様々な有機酸を生成。タンパク質分解酵素の生成能が低く、加熱による熱変性した穀物に繁殖しづらい反面、生の穀物に旺盛に繁殖する特性があります。
逆に、アスペルギルス属は加熱した穀物に繁殖するのが得意です。
水に生薬を混ぜて腐敗を防ぐ
酒葯を作る際、当帰・杜仲・海馬などの生薬を溶かした水で穀物粉を練って作られます。
これは腐敗防止のための工夫だと考えられています。
作り方の違い
甘酒は炊いたうるち米1:米麹0.7~1くらいの割合で仕込みます。
温度は糖化酵素が活発に働く55℃~60℃と高い温度で7~8時間程度置くのが一般的です。
対して酒醸は炊いたもち米100:米麹6と米麹が圧倒的に少ない仕込み配合となっています。
そのため甘酒と比べるとすっきりとした甘さに仕上がります。
30℃は腐敗のリスクが高い
仕込み後は30℃前後の温度で置いて3日間程度発酵させます。
30℃という温度で置くのは、
普段日本酒を造る私の感覚からするとかなり恐ろしいです。
恐ろしいと思う理由は、30℃という温度が雑菌に汚染されやすい温度帯だからです。
普通は低温or高温にして雑菌を防ぐ
例えば、日本酒の仕込み温度はもろみで高くてせいぜい15℃くらい。
なるべく低温にすることで腐敗を防ぎます。
甘酒の仕込みは55℃~60℃と高温にすることで腐敗を防ぎつつ、糖化に最も適した温度を取ります。
酒葯は優れた発酵スターター
おそらく酒醸を30℃にするのは速やかに酵母菌の繁殖を促すためだと考えられます。
そのため酵母菌を含み、麹として糖化を進めつつ、生薬の殺菌作用を活用した酒葯は三位一体の理にかなった発酵スターターだと言えます 。
酒醸の作り方
- もち米 1合
- 砂糖 小さじ1
- 小麦粉 ひとつまみ
- 乾燥麹 5g(生麹なら10g)
- 日本酒(純米酒) 120cc
+追加分 約100cc
本場の製法のように酒葯やクモノスカビの麹を入手できればいいのかもしれませんが、ちょっと難しいですよね。
そこで、練り水に日本酒を使うことで腐敗のリスクを下げることができます。
腐敗を避けるテクニック
砂糖・小麦粉・麹・日本酒をボウルに入れて混ぜ、清潔なふきんをかけて暖かい場所に1日置きます。
これで空気中の酵母菌を繁殖させます。
日本酒のアルコールが他の雑菌を抑え、腐敗のリスクを減らしてくれます。
ホワイトリカーや焼酎ではアルコール度数が高すぎて酵母菌が湧かないので、日本酒(できれば純米酒)を使ってください。
洗って一晩浸水したもち米を通常の水加減で炊飯器で炊きます。
40℃くらいに冷ましたら材料をすべて混ぜ、清潔な容器へ。
このとき水分が少ないようならヒタヒタになるまで日本酒を追加します。
暖かい場所に保管して2~3日で完成
1日経つともち米が水分を吸うので、追加で日本酒をまたヒタヒタになるまで満たします。
暖かい場所に置き、2~3日。冬場でも4~5日ほど置いてぷつぷつと湧いてきたら完成です。
冷蔵で1~2か月ほど持ちます。
使い方としてはエビチリなどの中華料理にはもちろん、冒頭で紹介した酒醸圓子など中華料理全般に。
砂糖やみりんの代わりとしても使えます。
アルコール発酵を経た本場の酒醸は、ややあっさりとした甘さとクセのない酸味。
ほのかにリンゴ様の香りもあり食べやすく、デザートに使うのも頷けます。
この記事内の写真の酒醸は55℃でアルコール発酵させず、見た目だけ再現しました。
日本でも作れる代替えレシピ
酒粕を使うとアルコール発酵をさせなくても本場に近い味が再現できます。
- 酒粕 100g
- 水 100g
- 黒糖 35g
- 酢 20cc
作り方
材料をすべて鍋に入れ、混ぜながら沸騰させる。
湧いたらなめらかになるまでよく混ぜたら完成。
黒糖と酒粕で少し色がついていますね。
黒糖に含まれるポリフェノールが酒粕のにおいをマスキングする効果があるそうです。
黒糖の効果で酒粕のにおいは少なく、こっくりとした味わい。
エビチリなど濃い目の味付けに好相性です。
ノンアルコールの酒醸
酒醸はネットでも購入可能です。
国内ではヒガシマル社がノンアルコールかつ添加物無添加の酒醸を販売しています。
アルコール分が気になる方はご参考ください▼▼▼▼▼
酒醸の使用例
エビチリやホイコーローなど中華料理に旨味・とろみを加えます。
引用:シェフごはん
引用:みんなのきょうの料理レシピ
酒醸カルボナーラ
中華料理以外にも幅広く使うことができ、パスタの生クリームの代用などに使えます。
- パスタ 1束
- ベーコン 2枚
- ニンニク 1かけ
- オリーブオイル 大さじ1
卵液
- 卵黄 1つ
- 酒醸 大さじ2
- 粉チーズ 大さじ2
- 塩 ひとつまみ
作り方
熱したフライパンにオリーブオイル・ベーコン・ニンニクを入れ、ベーコンがカリッとするまで炒める。
炒まったら火を止め、荒熱をとる。
パスタを茹でる間に、ボウルに卵液の材料を入れてよく混ぜ合わせる。
パスタが茹で上がる直前に卵液と炒めたベーコン・ニンニクを油ごとすべて入れ、混ぜ合わせる。
最後に茹で上がったパスタをボウルに入れ、よく混ぜたらお皿に盛り付けて完成。
生クリーム無しでもしっかりコクが出ます。
言われないとお米が入ってるとは分からないですよ。
こんにちは。酒醸を作ってみたくこのサイトに辿りつきました。この通りにやってみようとしているところで、質問させてください。
炊いた餅米と全ての材料を混ぜたところで清潔な瓶などに移して数日置くとのことですが、この際に瓶は密閉するのでしょうか、それとも布巾などを被せておけば良いのでしょうか。基本的な質問で申し訳ございませんが、ご教示いただけると助かります!
Munewoさん
こんにちは!
結論からいうとどちらでもいいと思います。
どちらか正解というわけではなく、フタで密閉したら清潔に保ちやすいですし、布巾で空気と触れやすい状態にすると空気中の酵母菌が降りてきやすくなります。
空気中の菌を利用した発酵はそれぞれの環境に大きく左右されますので、どちらも試してみて、うまくいく方を採用するといいですよ。
最初は清潔に保ちやすいフタで密閉でしょうか。(1日1回フタを開けてガス抜きするとより安全です)
うまくいくことを祈っています(^^)
なるほど、参考になります。ありがとうございます!