当ブログでよく紹介する味噌や塩麹は10%以上が塩でできています。
そのため塩を見分けて使うのも非常に重要です。
しかし、実際に塩を目的に合わして使おうにも、
塩の種類がパッと見では非常に見分けづらいのが現状です。
そこでこの記事では、
- 塩の種類
- 市販の塩が見分けづらい理由
- 実際の商品を使って塩を分類
- 塩の適した使い方
この順で塩の見分け方を解説していきます。
結論から言うと、大事なのは目的に適した塩を使うことです。

発酵食に興味無くとも
塩の見分け方にお悩みの方、
普段使いの塩にどんな塩を選べばいいのか知りたい方、
のヒントになるのでぜひご参考ください。
▼▼▼▼▼この記事を書いた人▼▼▼▼▼
まずは見分け方の前に、塩の種類を確認しておきましょう。
塩の種類
塩の原料は岩塩・湖塩・海水の3種類があります。
市販される塩は、さらにここから製法によって天然塩・精製塩・再加工塩の3種類に分類することができます。
塩の原料はすべて海水
岩塩・湖塩は地殻変動などにより海水が結晶化したものなので、もとを辿れば全て海水に由来します。
市販の塩の種類…
- 天然塩
- 精製塩
- 再加工塩
→原料はすべて海水由来
天然塩について
一般に言われる天然塩という言葉に明確な定義はありませんが、
ざっくりまとめると原料そのまま・もしくは水分を飛ばしただけの塩を指します。
簡単にいうと、「原料そのままの塩」

天然塩と聞いて一番イメージしやすいのが、荒く砕いただけの岩塩ではないでしょうか。
ピンク色の岩塩をよく見かけますが、あれは岩塩層に含まれる微量の鉄分が含まれるためです。
切り出して簡単な洗浄だけをした場合のものが多く、原料そのままに近い形で販売されています。
水分を飛ばしただけの塩

他には塩田で作る天日塩も天然塩のカテゴリーに入ります。
海水や水に溶かした岩塩・湖塩を天日で鹹水(かんすい)という塩分濃度の高い塩水を作って煮詰めて作られるので、
原料塩の成分がそのまま豊富に含まれる塩に仕上がります。
そのまま残る成分とは主にマグネシウム・カルシウム・カリウムです。
塩に含まれるミネラル | 呈味(ていみ:感じる味) |
ナトリウム | 塩味 |
マグネシウム | 苦味・旨味 |
カルシウム | 甘味 |
カリウム | 酸味 |
それぞれ苦味・甘味・酸味を呈しており、産地によるミネラルバランスの違いにより多種多様の味の塩が出回っています。
天然塩…
- 原料そのまま・もしくは水分を飛ばしただけの塩
- 原料・産地によって含まれる成分は様々
- 甘味・旨味・苦味など味幅がある
精製塩について

精製塩はイオン透過膜法(超微細なフィルター)や電気分解を利用して塩化ナトリウムと他のミネラルを人工的に分離した塩のことです。
例外はありますが、塩化ナトリウムの純度が99%以上と高いのも特徴のひとつ。
大量生産に向くので安価ですが、塩化ナトリウムだけを取り出すように精製するので、
塩だけの味が立ち、塩辛く感じやすい味です。
精製塩…
- 人工的に塩水から塩分を分離して作る
- 塩化ナトリウムの純度が99%以上(例外アリ)
- 雑味が無い反面、塩辛く感じやすい
- 大量生産に向き、安価で手に入りやすい
再加工塩について

再加工塩は塩の精製に、にがりやミネラルを添加して作られます。
にがりとは豆腐作りにも使われる海水由来の塩化マグネシウムのことです。
塩化ナトリウム以外のミネラルが少ない塩に任意で他のミネラルを添加し、塩辛くならないように味の調整を行います。
他にも海藻成分を加えた藻塩、燻製香やスパイスを添加したフレーバーソルトなどもこれにあたります。
原料には
- 天然塩を使うもの
- 精製塩を使うもの
- 柑橘・ハーブなどのフレーバー
などの組み合わせ自由度が高く、こちらも色々な種類が販売されています。
再加工塩…
- 岩塩や湖塩を一度溶かして精製
- 味の調整に、にがり(ミネラル)を添加
- 精製塩ほど塩辛く感じない
- フレーバーソルトもこのグループに入る
市販の塩が見分けづらい理由
表記に規制がある
ここからが問題なのですが、
パッケージだけで精製塩・天然塩といった塩の種類をパッと見分けるのは難しいです。
というのも、
日本では市販の塩の商品名に天然・自然といったワードを入れることが禁じられています。
(食用塩公正取引協議会 規則・規約第5条)

パッケージの裏も隅々まで読んでもどこにも書かれてません。
ここが塩選びのややこしい所です(-“-)
他にも自然塩や天然製法などが表記できません。
「天然」と名乗ってはいけない
理由は、天然や自然と言った言葉は消費者に誤解を与える恐れがあるからです。
天然・自然という言葉は
「健康に良い」
「手間ヒマかかった良い商品」
というプラスイメージが強いワードです。
過去に具体的な根拠のない謳い文句の商品が横行したのが規制の要因とされてます。
規制をかけられた理由

このような規制がかけられたのには、塩の原料にも関係があります。
天然塩でも精製塩でも、全ての塩の原料は海水に由来するものです。
先ほど触れたように塩の原料は岩塩・湖塩・海水塩の3種類に分けられます。
岩塩と湖塩も地殻変動により海水が陸地に閉じ込められて生まれたものなので、
元をたどれば海水です。
海水由来であるということは、考えようによっては全ての塩は「天然由来」と言えてしまいます。
かなり乱暴な論理だとは思いますが…
しかし、実際このような理屈であたかも天然成分豊富な塩に見せかけた精製塩や再加工塩が出回ったのも事実。
そのため「天然」「自然」といったワードの使用を禁止するルールが作られました。
実際の商品を見ながら塩を分類してみる
商品名で天然塩・精製塩・再加工塩かは見分けられませんが、ちゃんと見分ける方法はあります。
ここでポイントとなるのが塩化ナトリウムの純度と製造工程です。
実際に売られてる塩を参考にしながら分類してみましょう。
まずはこちら。
塩事業センター 食塩
「 塩事業センター 食塩 」は1キロ100円ちょいの超リーズナブル塩です。
表示には
原材料名 | 海水(日本) |
工程 | イオン膜、立釜、乾燥 |
品質規格 | 塩化ナトリウム 99%以上 カルシウム 基準0.02% マグネシウム 基準0.02% カリウム 0.25%以下 |
とあります。
①塩化ナトリウムの純度を見る
見分けるには、まず 塩化ナトリウムの純度を見ます。
食塩相当量と表記される場合もありますが、どちらも一緒です。
この塩には「塩化ナトリウム…99%以上」とあるので、精製塩の可能性が高くなります。
ナトリウム表記の計算方法
似た表記で「ナトリウム」と書かれてたら
ナトリウム×2.54=塩化ナトリウム
の式で換算可能。
逆算すると、99.5÷2.54=39.17 なので、
ナトリウムが100g中39g以下なら、
塩化ナトリウム純度も99.5%以下だと覚えておいてください。
塩化ナトリウムの純度…
- 塩化ナトリウム=食塩相当量
- ナトリウム×2.54=塩化ナトリウム で計算可能
- ナトリウムが39g以下なら塩化ナトリウムも99.5%以下
②製造工程を見る
次に塩の製造工程を見ます。
製造工程は、いわば塩の履歴書です。
全部覚えるのは大変なので、「へぇ~こんな感じなんだ」と流し見してもらってOKです。
内容 | |
---|---|
塩を濃縮する工程 | |
天日 | 塩田などで、天日や風を利用して塩分を濃縮 |
イオン膜(イオン透過膜) | 「イオン透過膜」という膜を使って塩分を精製 |
溶解 | 天日塩、岩塩などを水や海水に溶かして濃い塩水を作る |
塩を結晶化する工程 | |
平釜 | 密閉されていない釜で煮つめて結晶を作る |
立釜 | 密閉した釜で煮つめて結晶を作る。平釜より効率的 |
塩の品質・状態を整える工程 | |
粉砕 | 塩のかたまりを砕いて小さくする |
混合 | 添加物や、違う塩を混ぜる |
乾燥 | 加熱などの方法により塩から水分を蒸発させる |
焼成 | 塩の結晶を加熱して、固まりにくくサラサラした「焼塩」をつくる |
洗浄 | 水または塩水で、塩の表面を洗う |
岩塩や湖塩を掘り出す工程 | |
採掘 | 岩塩や湖塩を掘り出し、または採取する |
このように、色々な工程があります。
色んな項目があってややこしいですが、整理してみましょう。
精製塩の見分けかた
塩事業センター 食塩
「塩事業センター 食塩」 の表示をもう一度見てみます。
原材料名 | 海水(日本) |
工程 | イオン膜、立釜、乾燥 |
品質規格 | 塩化ナトリウム 99%以上 カルシウム 基準0.02% マグネシウム 基準0.02% カリウム 0.25%以下 |
工程は イオン膜、立釜、乾燥 とあるので、
- イオン膜透過法で塩水を濃縮して
- 密閉釜で煮詰めて
- 加熱・乾燥させた塩
ということが分かります。
イオン膜とは海水を電気分解をして塩そのものを精製する人工的精製法です。
塩化ナトリウム純度99%+人工的精製法ということで、この塩は精製塩と分かります。
続けてもう1個いきましょう。
天然塩の見分けかた
カンホアの塩
「カンホアの塩」の表示には、
原材料名 | 海水 (ベトナム・カンホア) |
工程 | 天日、粉砕 |
品質規格 (100gあたり) | 食塩相当量 85.82g マグネシウム 780mg カルシウム 620mg カリウム 250mg |
とあります。
食塩相当量とは塩化ナトリウムのことなので、純度は85%。
工程は天日、粉砕ですので、
- 天日で海水(ベトナム)を濃縮して
- 砕いて細かくした塩
天日で海水の水分を飛ばして塩を得ているので、海水のミネラルは塩にそのまま残ります。
つまりこれは天然塩の部類に入ります。
最後にもう1ついっておきましょう。
再加工塩の見分けかた
伯方の塩
原材料名 | 天日海塩(93%メキシコまたはオーストラリア) 海水(7%日本) |
工程 | 溶解、平釜 |
品質規格 (100gあたり) | 塩化ナトリウム 95g カルシウム 110mg マグネシウム 90mg カリウム 50mg |
CMでお馴染みの「伯方の塩」です。
ここで言う海水とは、にがり(海水由来のマグネシウム)のことです。
塩化ナトリウムは100g中95gなので純度99%以下です。
工程からわかることは、
- メキシコかオーストラリアの天日塩と日本の海水(にがり)を
- 溶かして濃い塩水を作り
- 密閉されてない釜で煮詰めて作る塩
ということになります。
純度99%以下でにがりで添加調整しているので、これは再加工塩の部類に入ります。
このように工程を見ることで、塩の生い立ちを知ることができます。
塩の適した使い方
世の中にまだまだ沢山の塩があり、それらを見分けるのは中々大変なことですが、
工程や成分からその製品がどのように作られたか必ず読み解くことができます。
適材適所で塩を選ぶ

そして見分け方が分かると、塩を適材適所の方法で使えるようになります。
精製塩の特性
例えば、塩化ナトリウムの純度の高い精製塩は悪者になりがちですが、
逆に言えば雑味が無いのでクリアでさっぱりとした味と捉えることができます。
プロの味噌屋・醤油屋さんでも味を味を重くしないため、
あえて精製塩や塩化ナトリウム純度の高い塩を使う場合もあるくらいです。
それに安価なので、塩もみ・板ずりなどの料理の下処理には最適です。

天然塩の特性
天然塩も、ミネラルが多い塩を淡泊な料理に使うと味がくどくなることだってあります。
その代わり味噌や塩麹などの旨味を更に引き立たせてくれる場合だってあります。
再加工塩の特性
再加工塩を精製塩と天然塩の中間と考えて使うのも良いでしょう。
値段も手ごろなものが多く、
キッチンで使う普段使いのは再加工塩にして、仕上げに使う食卓塩にちょっといい天然塩にするといった使い分けをするとコスパも◎です。
目的によって塩を選べると、料理や食事が更に楽しくなりますよ。
おすすめの塩はこちら
実際にどの用途でどんな塩がおすすめかはこちらの記事でもより詳しく紹介しています▼▼▼

この記事で紹介しきれなかった、塩の実際の味や感想も沢山紹介していますので、ぜひご覧ください。
塩をより詳しく知るのにおすすめの書籍
さらに詳しく塩について知りたい方はこちらの本がオススメです。
日本のみならず世界各地の塩の詳細をまとめられており非常に内容が濃く、
大抵の市販の塩がこの1冊あれば調べることができます。
それぞれに適した料理や用途も解説されているので、すごく参考になります。
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冒頭にも少し触れましたが当ブログは麹メインの発酵食を紹介するブログです。
発酵食にとって塩は保存性だけでなく味にも大きく影響を与える存在です。
味噌の仕込みに適した塩についてはこちらで紹介しています▼▼▼▼▼






他にも、麹のメリットや使い方はこちらにまとめてあります▼▼▼▼▼



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