発酵tips

酵素は“はたらくタンパク質”?発酵のプロが酵素を人に例えて解説すると…

発酵には酵素が不可欠です。

よく微生物が繁殖することと混同されがちですが、

発酵とは読んで字のごとく、酵素から発せられて起こる化学反応のことを指します。

そのため厳密には、微生物が生成する酵素が働いてはじめて発酵といえます。

発酵食は酵素がはたらいて起こる化学反応

最近は酵素ジュースとか酵素サプリとか、やたらと酵素と名の付く健康系食品が増えました。

しかし酵素ってなに?と質問されるとけっこう答えづらいですよね。

そこでこの記事では酵素を人に例えてわかりやすくまとめました。

その上でこの記事では、

  1. 酵素ってナニモノ?
  2. 酵素の弱点
  3. 酵素の栄養価値
  4. 酵素のメリット

以上の4点を順番に解説していきます。

▼▼▼▼▼この記事を書いた人▼▼▼▼▼

せいぎくいん

改めまして、自宅製麹員(じたくせいぎくいん)と申します。

本業は造り酒屋で10年以上蔵人(くらびと)をしている発酵のプロです。

まずは酵素はナニモノなのか?というところからみていきましょう。

酵素ってナニモノ?

酵素とは一体何者なのか

酵素はタンパク質

酵素とはただのタンパク質です。

そのため酵素そのものを摂取してもアミノ酸として消化・吸収されるだけです。

詳しくは以下で触れますが、

結論から言うと酵素自体に高い栄養価値はありません

特定の物質と化学反応を起こす

酵素の働きは特定の物質との化学反応です。

酵素には触媒と呼ばれる、触れた特定の物質を変化させる力を持ちます。

“はたらく細胞”で赤血球が酸素を全身に届ける働きがあるように、

酵素には“はたらくタンパク質”として物質Aを物質Bに変化させる働きを持ちます。

酵素は特定の物質を変化させる働きを持つ

反応する物質は決まっている

例えばアミラーゼという酵素は、でんぷんを→乳糖・オリゴ糖(二糖類・多糖類)→ブドウ糖(単糖)とどんどん細かく分解していきます。

逆に言うと、アミラーゼはでんぷん以外には反応しません

酵素はそれぞれが化学反応を起こす物質が決まっています。

せいぎくいん

特定の物質にめっちゃ反応しますが、それ以外には無反応です。

人体に関わる酵素は2種類

膨大な数のある酵素のうち、人体に関わる主な酵素は分解酵素代謝酵素の2種類に分かれます。

さきほどのアミラーゼは分解酵素に分類されます。

  1. 分解酵素…食物の栄養素を分解し、消化・吸収に関わる
  2. 代謝酵素…分解した栄養素を体のエネルギーに変え、代謝・排泄に関わる

酵素は“はたらくタンパク質”

私が酵素についてお話する際、よくこの作品を引き合いに出します。

せいぎくいん

赤血球や白血球などの人体の細胞を擬人化したマンガ。

時にコミカル、時にシリアスな展開を楽しみつつ、色々な細胞がはたらく様子を学べます。

面白い!

“はたらく細胞”は赤血球や白血球が運送屋さんや警察官といった職業に擬人化されたマンガです。

それと同様に言い換えると、酵素ははたらくタンパク質と言い表すことができます。

酵素とは…

  1. はたらくタンパク質
  2. 特定の物質と化学反応を起こす
  3. 人体に関わる主な酵素は分解酵素と代謝酵素の2種類

酵素の職業は料理人

分解酵素…仕込み・下処理担当

“はたらく細胞”では、細胞たちが様々な職業に就いていますが、酵素の職業は料理人に例えられます。

包丁で食物を刻むイメージ

分解酵素はその名の通り、食物の栄養素を細かく分解する働きを持つ酵素です。

食材の栄養素を分解して体に吸収しやすくするので、ちょうど調理場で食材の下処理・仕込みを担当する料理人のイメージにぴったりです。

分解酵素を例えると、包丁を持った料理人

例えば、アミラーゼという分解酵素はでんぷんを糖質に分解する働きがあり、人間の唾液や麹に多く含まれます。

せいぎくいん

身近な例だと、中華餡かけって食べてるうちに餡(あん)がゆるくなりますよね?

あれは箸に付着した唾液のアミラーゼが片栗粉(でんぷん)を分解していくからです。

他にもたんぱく質をアミノ酸に分解するプロテアーゼぺプチターゼなど、栄養素によってその道のスペシャリストの酵素が数多く存在します。

代謝酵素…調理担当

代謝酵素は調理担当の料理人

一方で代謝酵素は調理担当の料理人に例えられます。

食物の栄養素を体のエネルギーとして使うには、栄養素をATP(アデノシン三リン酸)というエネルギーに換えやすいカタチ(エネルギー通貨と呼ばれます)に変える必要があります。

食後の体内では栄養素をATPに変換しようと消化・吸収が始まりますが、この時栄養素をATPへ変換してくれるのが代謝酵素です。

せいぎくいん

分解酵素が仕込み(分解)を終えた栄養素を、食べやすい食事(ATP)に調理する役割を持ちます。

調理をしているコック

酵素を例えると…

  1. 分解酵素…仕込み・下処理担当
  2. 代謝酵素…調理担当 

の料理人にそれぞれ例えることができる

酵素の弱点は?

酵素はそれぞれが非常に仕事ができるプロフェッショナルですが、一方で繊細で職人肌な面もあります。

環境によっては活動が鈍くなる

環境が合わないと酵素の活動は落ち込む

酵素はそれぞれ活躍できる環境が異なります。

そのため得意な温度帯やpHから外れた環境だと、途端に活動が鈍化してしまう一面を持ちます。

例えば、タンパク質を分解するプロテアーゼは35℃位の温度で最も活発に働きますが、でんぷんを糖質に変えるアミラーゼは55℃位で活発に働きだします。

それぞれの酵素が最も活発に働く環境はバラバラです。

せいぎくいん

酵素たちはバリバリ仕事ができるぶん、繊細な面もあります。

熱に弱い

繊細な面は他にもあります。

はたらくタンパク質と言った通り、酵素はタンパク質の仲間です。

そのため高熱になると熱変性が起こって酵素が働かなくなってしまいます。

せいぎくいん

卵の透明な白身に熱が加わると白く固まって元に戻らなくなりますよね?

あれが熱変性です。

一度熱変性をしたタンパク質は元に戻ることはなく、触媒としての機能も失ってしまいます。(死活化)

卵が固まるのはタンパク質の熱変性

熱変性が起こる温度は酵素の種類にもよりますが、約50~70℃の間で起こり、死活します。

そのため加熱調理で熱を加えた食材の酵素はまず間違いなく死活しています。

胃酸でも死活する

酵素はタンパク質なので、肉や魚と同様に口から摂取すると、到達した胃の中で強い胃酸で溶かされて働かなくなります。

酵素は胃酸で死活する

そのため酵素を口から摂取しても死活するので意味はありません

食物に含まれる食物酵素を摂取しようにも加熱加熱により死活してしまうし、加熱されてなくとも胃酸により触媒としての機能は失われます。

胃酸以降で働く体内酵素によりアミノ酸に分解されて吸収されるだけです。

酵素の弱点…

  • 活発に働ける環境はそれぞれ違う
  • タンパク質なので熱に弱い
  • 口から摂取しても胃酸で死活してしまう

酵素に栄養価値はほぼない

死活してしまうとただのタンパク質ですから、栄養素から見てもアミノ酸として分解・吸収されるだけなので健康に対して高い効果があるとは言えません。

例えば酵素サプリは食物の栄養素を長い時間をかけて分解・凝縮して摂取効率を上げたものです。

この栄養素の分解・凝縮に食物酵素が用いられるのであって、

酵素は栄養をエネルギーへと代謝する手段であって目的ではありません

重要なのは酵素の仕事

酵素を例えるとあくまで料理人であり、人体に有益な栄養素は調理された食材の栄養素です。

レストランを人体に例えると、酵素はコックさん

そのため“酵素パワー”や“酵素が活きてる〇〇”といった謳い文句ばかりに注力している商品は、

「切れ味バツグンの包丁で作りました!」

「絶対に焦げつかないフライパンで炒めました!」

と、道具と手段をやたらアピールしてくるレストランのようなものだと言えます。

酵素の栄養価値は…

  1. 酵素自体に栄養はほとんど無い
  2. 酵素は栄養素を摂る手段であって目的ではない

酵素のメリットとは?

では酵素の仕事=人体へのメリットは何なのかをまとめると、以下の2点に絞られます。

消化・吸収を助ける

酵素が働くことによって食材の味・成分が変化するものは沢山あります。

例えば、当ブログでよく登場する甘酒は、の分解酵素が米のでんぷんをブドウ糖に分解して作られます。

甘酒はアミラーゼがでんぷんをブドウ糖に分解

ブドウ糖は糖質の中でも最も小さいので摂取後すぐに吸収されて、大量に糖を消費する脳への栄養補給になるほか、血糖値の上昇させ、満腹中枢を満たす働きがあります。

このような性質を利用すると、食事の前に少量の甘酒を摂取すると満腹感を感じることでダイエットに繋がるといった利用方法が生まれます。

食材をよりおいしくする

もうひとつを例に出しましょう。

麹の持つ酵素は30種類以上あると言われていて、タンパク質・脂質・炭水化物といった3大栄養素を分解する働きを持ちます。

その力をいかんなく発揮してる代表例が味噌です。

味噌は3大栄養素を酵素分解して複雑な旨味が生まれる

タンパク質の塊である大豆を分解して旨味のアミノ酸に換えることで味噌独特の複雑な旨味が生まれます。

【参考】手前味噌はなぜ自慢したくなる?自家製味噌がおいしくなる理由

このような酵素のメリットを受容するには、口に入る前に酵素が働いてることが重要です。

酵素のメリット…

  • 栄養素の消化・吸収を助ける
  • 旨味成分を増やし、食材をよりおいしくさせる
  • そのためには口に入る前に酵素が働いている必要がある

まとめ

酵素を料理人に例えて、酵素の持つ性質と人体へのメリットについてまとめました。

酵素は非常に有益な物質ですが、膨大な数があるうえ、その説明も意外と難しいものです。

そのため酵素自体の役割自体には触れられずに健康・宣伝効果にばかりフォーカスされすぎた商品も多いので注意が必要です。

この記事が酵素について知る手助けになれば嬉しいです。

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