酵素は働くタンパク質?メリットは?酵素の栄養価値と弱点について

発酵には酵素が不可欠です。
よく微生物が繁殖することと混同されがちですが、
発酵とは読んで字のごとく、酵素から発せられて起こる化学反応のことを指します。
そのため厳密には、微生物が生成する酵素が働いてはじめて発酵といえます。

よく酵素ジュースとか酵素サプリとか、酵素と名の付く健康系食品が増えました。
しかし酵素ってなに?と質問されるとけっこう答えづらいですよね。
そこでこの記事では酵素についてなるべくわかりやすくまとめました。
その上でこの記事では、
- 酵素ってナニモノ?
- 酵素の弱点
- 酵素の栄養価値
- 酵素のメリット
以上の4点を順番に解説していきます。
▼▼▼▼▼この記事を書いた人▼▼▼▼▼
まずは酵素はナニモノなのか?というところからみていきましょう。
酵素ってナニモノ?

酵素は“はたらくタンパク質”
酵素について考える時に、この作品を引き合いにするとわかりやすいかと。
赤血球や白血球などの人体の細胞を擬人化したマンガ。
時にコミカル、時にシリアスな展開を楽しみつつ、色々な細胞がはたらく様子を学べます。
面白い!
“はたらく細胞”は赤血球や白血球が運送屋さんや警察官といった職業に擬人化されたマンガです。
それと同様に言い換えると、酵素ははたらくタンパク質と言い表すことができます。
酵素はタンパク質

酵素はそれ自体はタンパク質です。
酵素そのものを摂取してもタンパク質として消化・吸収されます。
そのため酵素自体に高い栄養価値はありません。
特定の物質と化学反応を起こす

ただし、普通のタンパク質ではありません。
酵素は特定の物質との化学反応を起こすことができます。
酵素には触媒と呼ばれる、触れた特定の物質を変化させる力を持ちます。
“はたらく細胞”で赤血球が酸素を全身に届ける働きがあるように、
酵素には“はたらくタンパク質”として物質Aを物質Bに変化させる働きを持ちます。
反応する物質は決まっている
例えばアミラーゼという酵素はでんぷんに反応します。
とどんどん細かく分解していきます。
身近な例だとごはんを噛んでるとだんだん甘くなりますが、
あれは唾液のアミラーゼがお米のでんぷんを糖に分解しているからです。
ただし、アミラーゼはでんぷん以外には反応しません。
酵素はそれぞれが化学反応を起こす物質が決まっています。
特定の物質にめっちゃ反応しますが、それ以外には無反応です。
酵素の職業は料理人
膨大な数のある酵素のうち、人体に関わる主な酵素は分解酵素と代謝酵素の2種類に分かれます。
- 分解酵素…食物の栄養素を分解し、消化・吸収に関わる
- 代謝酵素…分解した栄養素を体のエネルギーに変え、代謝・排泄に関わる
さきほどのアミラーゼは分解酵素に分類されます。
ためしに酵素をある職業に就けて例えてみましょう。
分解酵素…仕込み・下処理担当
“はたらく細胞”では、細胞たちが様々な職業に就いていますが、酵素の職業は料理人に例えられます。

分解酵素はその名の通り、食物の栄養素を細かく分解する働きを持つ酵素です。
食材の栄養素を分解して体に吸収しやすくするので、ちょうど調理場で食材の下処理・仕込みを担当する料理人のイメージにぴったりです。

先ほどのアミラーゼはでんぷんを糖質に分解していました。
他にもたんぱく質をアミノ酸に分解するプロテアーゼ・ぺプチターゼなど、栄養素によってその道のスペシャリストの酵素が数多く存在します。
もうひとつ身近な例を挙げると、
中華あんかけを食べてるとあんがゆるくなりますよね?
箸についた唾液のアミラーゼが徐々に片栗粉のでんぷんを分解していくので起こる現象です。
代謝酵素…調理担当

一方で代謝酵素は調理担当の料理人に例えられます。
食物の栄養素を体のエネルギーとして使うには、栄養素をATP(アデノシン三リン酸)というエネルギーに換えやすいカタチに変える必要があります。
食後、体内では栄養素をATPに変換しようと消化・吸収が始まりますが、
この時に栄養素をATPへ変換するのが代謝酵素です。

分解酵素が仕込み(分解)を終えた栄養素を、食べやすい食事(ATP)に調理する役割を持ちます。
酵素の弱点は?
酵素はそれぞれが非常に仕事ができるプロフェッショナルですが、一方で繊細で職人肌な面もあります。
環境によっては活動が鈍くなる

酵素はそれぞれ活躍できる環境が異なります。
そのため得意な温度帯やpHから外れた環境だと、途端に活動が鈍化してしまう一面を持ちます。
例えば、タンパク質を分解するプロテアーゼは35℃位の温度で最も活発に働きますが、
でんぷんを糖質に変えるアミラーゼは55℃位で活発に働きだします。
それぞれの酵素が最も活発に働く環境はバラバラです。
酵素たちはバリバリ仕事ができるぶん、繊細な面もあります。
熱に弱い
繊細な面は他にもあります。
はたらくタンパク質と言った通り、酵素はタンパク質の仲間です。
そのため高熱になると熱変性が起こって酵素が働かなくなってしまいます。
卵の透明な白身に熱が加わると白く固まって元に戻らなくなりますよね?
あれが熱変性です。

一度熱変性をしたタンパク質は元に戻ることはなく、触媒としての機能も失ってしまいます。(失活といいます)
熱変性が起こる温度は酵素の種類にもよりますが、約50~70℃の間で起こり、失活します。
胃酸でも失活する
酵素はタンパク質なので、肉や魚と同様に口から摂取すると、到達した胃の中で強い胃酸で溶かされて働かなくなります。

食物に含まれる食物酵素を摂取しようにも加熱加熱により死活してしまうし、加熱されてなくとも胃酸により触媒としての機能は失われます。
胃酸以降で働く体内酵素によりアミノ酸に分解されて吸収されるだけです。
酵素に栄養価値はほぼない
酵素は手段であって目的ではない
酵素は死活してしまうとただのタンパク質です。
そのため酵素自体の栄養価は特段高いものではなく、酵素自体を摂取することはあまり意味はありません。
例えば酵素と名の付く商品は大きく分けて
- 酵素そのものを製品化しているもの
- 酵素を利用して栄養素を分解・凝縮したもの
の2種類があります。
酵素そのものを製品化
酵素そのものを製品化したものは食後に摂ることで分解酵素を補い、胃での消化を助けてくれます。
酵素を利用して栄養素を分解・凝縮した製品
もうひとつは酵素を利用して食材の栄養素を分解して、吸収効率を上げたタイプです。
数十種類の食材の栄養素を一度に摂取するために酵素が用いられます。
どちらのタイプにせよ、酵素は栄養を消化・吸収する手段であって目的ではありません。
酵素のメリットとは?
では酵素のメリットは何なのかをまとめると、以下の2点に絞られます。
メリット①:消化・吸収を助ける
酵素が働くことによって食材の味・成分が変化するものは沢山あります。
例えば、当ブログでよく登場する甘酒は、麹の分解酵素が米のでんぷんをブドウ糖に分解して作られます。

ブドウ糖は糖質の中でも最も小さいので摂取後すぐに吸収されて、大量に糖を消費する脳への栄養補給になるほか、血糖値の上昇させ、満腹中枢を満たす働きがあります。
このような性質を利用すると、食事の前に少量の甘酒を摂取すると満腹感を感じることでダイエットに繋がるといった利用方法が生まれます。
メリット②:食材をよりおいしくする
もうひとつ麹を例に出しましょう。
麹の持つ酵素は30種類以上あると言われていて、タンパク質・脂質・炭水化物といった3大栄養素を分解する働きを持ちます。
その力をいかんなく発揮してる代表例が味噌です。

タンパク質の塊である大豆を分解して旨味のアミノ酸に換えることで味噌独特の複雑な旨味が生まれます。
【参考】手前味噌はなぜ自慢したくなる?自家製味噌がおいしくなる理由
酵素を最も有効に取れるには
このような酵素のメリットを取り入れるには、口に入る前に酵素が働いてることが重要です。
さきほどの強力わかもとのような飲み薬を食後に飲むのも確かに有効ですが、
胃の中で胃酸の影響を受けながら酵素は反応しなければなりません。
そのため酵素のメリットを十分に受容するには、口に入る前に分解酵素が働いている方が望ましいと言えます。
まとめ
酵素を料理人に例えて、酵素の持つ性質と人体へのメリットについてまとめました。
酵素は非常に有益な物質ですが、膨大な数があるうえ、その説明も意外と難しいものです。
そのため酵素のメリットについてぼやけてしまうこともあります。
この記事が酵素について知る手助けになれば嬉しいです。
酵素により興味ある方はこちらの記事もぜひご参考ください▼▼▼
https://jitakuseigiku.com/nekase-genmai-kouso/