【1キロ以上の製麹】自宅での麹の造り方

この記事では1キロ以上の麹を自作する方法を写真や予定表と一緒に紹介します。
400~500gくらいならヨーグルトメーカーなどを活用した製麹がオススメです▼▼▼

用意などを含めると3日間かかる長丁場になりますが、麹菌が無事成長して麹が完成した時の嬉しさもひとしお。
なるべく作業やポイントを抑えていこうと思いますので、手間も物作りの楽しみと思って楽しんでもらえたら幸いです。
正直、かなりのボリュームある記事ですが、10年以上蔵人をしてきたノウハウをこれでもかってくらい詰め込みました。
ぜひ最後までおつき合いください。
▼▼▼▼▼この記事を書いた人▼▼▼▼▼


準備するもの
- 種麹
- 麹箱(水切りラック)
- 蒸し布・麹布
- せいろ(蒸し器)
- 電気毛布(こたつでもOK)
- 段ボール
- 温度計
- 茶こし
- 消毒用アルコール・手洗いせっけん


種麹
まずは製麹に欠かせない種麹(たねこうじ)を入手しましょう。
私がよく使うのは、京都の菱六の改良長白菌
愛知の糀屋三左衛門の米麹用
です。 お好みで大丈夫です。
種麹が手に入らない場合はスーパーで売っている麹でも代用可能です。
ただし、できた麹を次に使い回すのはおすすめしません。
その理由は詳しくはこちらをご覧ください▼▼▼



できるだけ種麹を使いましょう。
麹箱(水切りラック)
麹箱(こうじはこ)とは麹を育てる容器のことです。
私の場合はアマゾンで購入した食器の水切りラックを使ってます。
容器・ザル・蓋が1セットになってるタイプなのでお米洗いにも使えます。
生のお米には乳酸菌などたくさんの菌が付着してます。
米洗いにも使う場合は、中性洗剤でよく洗って、乾かしてから使いましょう。
蒸し布
蒸し布はお米を蒸す際にせいろに敷く布のことです。
ホームセンターなどでも手に入ります。ちょっと大きめくらいがいいです。
麹布
麹布は麹箱に敷く布です。
今回使っている麹布はパイレン素材という通気性に優れた布ですが、あまり市販はしていないのと、やや高価のが難点。
専門店で通販もありますが↓
https://kawashima-ya.jp/?pid=133959967
さらし布で十分代用できます。


もちろん、よく洗ってから使いましょう。
せいろ
これもホームセンターでも手に入ります。
大きく分けてステンレス製と木製に分けることができます。




ここもお好みや、すでにお持ちのもので大丈夫です。
炊飯器でもOK
ちなみに、炊飯器でも蒸し米はあげられます。
厳密にいうと、固めに炊くという感じですかね▼▼▼



一度にたくさんの量は作れないので今回は不向き。
ちょっとの量を蒸したい時におすすめですよ。
電気毛布・段ボール
電気毛布は丸洗いできるものを選びましょう。


保温性を高めるために麹箱がすっぽり入るくらいの段ボールも必要です。
こんな感じで使用します。


新品でなくてもよほど汚れてなければ大丈夫。
また、こたつがあれば電気毛布も段ボールも不要です。
温度計
温度は何度も確認しますので、できればコード付きで、表示が見やすいものの方が使いやすいです。
私はシンワ測定のG-2を使っています。
2点観測なので、片方は麹の温度、片方はそのままにして気温を測れるので便利。
コードが長くて表示も大きく、価格もお手頃と製麹にはいいことづくしです。
茶こし
茶こしは種麹を振りかける時に使います。


市販の種麹は粉末状が多いので、ふるって均一に麹菌を振るのに使います。
100均にあるので十分です。なるべく目の細かいものを選びましょう。
消毒用アルコール・手洗いせっけん
最後に大事なのが消毒用のアルコールやせっけんです。
麹に触れる時は必ず手洗いをしてから触るようにしましょう。
無香料の方が麹に匂いがつきません。
その補助として消毒用アルコールもあればばっちりです。


全体の作業スケジュール
作業全体のスケジュールはこのようになります。


洗える道具は全て洗って清潔に!
ここから麹造りの紹介に入りますが、前提として、
洗える道具は全部清潔に洗っておきます。
麹布・蒸し布・電気毛布の布類はしっかり洗ってしっかり乾かしておきます。
水切りラックや茶こし・温度計のセンサー部分など、麹が触れるものは中性洗剤でしっかり洗って乾かします。
もちろん麹に触れる時はしっかり手を洗います。
とにかく清潔第一です。
大事なのでもう一度言います。
清潔第一です。
米洗い
準備日 17:00 米洗い
まずはお米を洗います。


最初に水を張り、ザルにお米をあけてドボンと漬けます。
お米は水に浸けた瞬間が一番水を吸うと言われているので、できれば最初の水は浄水などキレイな水が良いです。
優しく混ぜるように1分間洗い、一度水を切ります。


最初は糠で水が濁り、濁った水をお米が吸ってしまうので1分以上浸けないようにします。
2回目・3回目は普通の水道水でもOKです。




2回・3回と水を替えて優しく洗います。
段々と水がきれいになってくるので、濁りが無くなったらキレイな浄水に浸漬します。
夏場なら3~5時間、冬場なら8~10時間程度浸漬します。
- 最初と最後の水は浄水を使う
- 濁りが無くなるまで優しく洗う


準備日 21:00 水切り
ザルを上げて一晩水切りします。


一晩かけて水を切ってあげましょう。
次からいよいよ蒸しの工程です。
蒸しはじめ
1日目 7:00 蒸しはじめ
せいろに蒸し布を敷き、お米を広げて蒸します。


お米に蒸気が入ると、徐々に色が変わってきます。




お米全体に蒸気が抜けたら蓋をして50分蒸します。
蒸してる間に水切りラックを中性洗剤でキレイに洗います。
キッチンペーパーで水気もしっかり拭きましょう。


1日目 8:00 蒸し上がり・種切り
蒸しあがったお米をザルにあけます。しゃもじでほぐしながら触れる位まで冷まします。
くれぐれも火傷に気をつけてください。




温度計で40℃~43℃位になったのを確認したら布を麹布に替え、1cm位の厚さにお米を均します。


種麹を茶漉しに半分入れ、満遍なく振り撒きます。




均したお米をひっくり返して、残り半分の種麹を振り撒きます。


お米の両面に種麹を振ったら、種麹が全体に馴染むようによく混ぜ込みます。
お米の粒が潰れない程度の力加減で大丈夫です。


山状にお米を寄せて、温度計を刺したまま麹布で包み、水切りラックへ入れます。




更に電気毛布で包み、段ボールに入れて保温。


これで種切りまで終わりました。
電気毛布を弱めの中位で入れます。
温度が低いからと言って、急激に温めなくでも大丈夫です。
次の工程の「床もみ」までに35℃~38℃くらいになってればOKです。
電気毛布の加減はその時の気温に左右されます。
最初のうちは1・2時間おきくらいに温度を確認しましょう。
1日目 17:00 床もみ
1日目最後の工程、床もみです。
36.1℃まで温度が上がりました。


お米を広げつつほぐしていきます。1粒ずつほぐすイメージです。


この段階ではお米に粘り気が少し残ってほぐすのに力がいるので、本職の麹屋さんは床(麹の作業台)に揉みこむるようにしてほぐすため床もみと呼ばれます。
お米がほぐれたらまた山状に寄せてラックに戻し、電気毛布と段ボールで養生します。
これで1日目の作業は終了です。
2日目の工程
残りの工程を確認します。


残るはあと「切り返し」「仲仕事」「仕舞仕事」の3工程です。
この3つの工程は、麹菌に酸素を供給しつつ、盛んになる発酵熱を下げてあげるのが目的です。
順を追って見ていきましょう。
2日目 7:00 切り返し
1晩経ったお米を見てみますと、ポツポツと白い斑点が出来ています。


ちょっと見づらいかもしれませんが…白い斑点が麹菌です。
目で見えるくらいに繁殖してきている証。
ここからは麹菌が爆発的に繁殖していくので、切り返しで繁殖に必要な酸素を供給してあげます。
お米をまた1粒ずつバラバラにするイメージでほぐしていきます。


ほぐしたら、水切りラックに戻し、ここからは平たく均一に敷き詰めます。
なるべく温度ムラを無くすためです。


備考に「お米がベタつくなら蓋外す」とありますが、
この時お米がベタベタと手にまとわりつくようであれば水分過多が考えられます。
フタはせずに麹布を折りたたむだけにして水分が飛ぶようにしましょう。
ここで水分過多になる場合はお米洗い、蒸し方で改善することができます。
こちらもぜひご参考ください▼▼▼








再び電気毛布と段ボールで養生して、35℃~38℃に上がったら次の仲仕事に入ります。
目視できるほど麹菌が繁殖してくると、麹自身の発酵熱ですぐ温度が上がるようになってきます。
電気毛布を少し弱めるなど調整してあげてください。
麹菌も生き物ですので、何回も造ってると元気な時もあればそうでない時があるのを肌で感じます。
時間通りにいかないのが当たり前だと思って、目安の温度に達したら仲仕事・仕舞仕事と移りましょう。
- 2日目から麹菌が盛んに繁殖を始める
- 盛んに上がる発酵熱を下げるのが目的
- 時間が多少ズレても大丈夫
- 目安の温度に達したら次の工程へ
2日目 11:00 仲仕事
温度が目安まで達したら仲仕事です。
仲とは作業の中間地点のことだという意味です。
切り返し同様にほぐします。
ちょっとずつ斑点が大きくなっているのが分かります。


仲仕事の備考に「ベタつくならザルだけにする」と書きましたが、
ここでまだお米がベタつくようなら水分を放出するために、ラックの外側容器を外してしまいます。


フタやラックを脱着して水分調整できるのが食器洗いラックのメリットです。
逆にお米が乾いてカリカリならラックの器に濡れタオルを敷いて調湿します。
キレイなタオルが無い場合はよく洗った蒸し布を使ってもいいです。


- お米がベタつく場合はザルだけにして水分を飛ばす
- 乾いてる場合は濡れタオルで加湿
2日目 16:00 仕舞仕事
仕舞仕事とはその字の通り、人間が手を入れる最後の工程です。
この頃になると麹菌の菌糸が外に広がり、固まりになってきています。


近撮するとこんな感じです。


固まりをほぐして、均一に敷きつめます。
人の手を入れる作業はこれで終わりです。
後は37℃~40℃の温度をキープします。
温度の上がりすぎ・下がりすぎないよう、たまに温度を見て電気毛布の強弱を調節してあげます。
ちなみに、「ちょっと目を離したら40℃を超えてた!」なんてことがあっても焦らなくても大丈夫です。
とりあえず段ボールから出して温度が下がるのを待ちましょう。
48℃から菌が死滅する
ただし、麹菌は48℃以上になると死滅するので、48℃を超えないように注意が必要です。
死滅一歩手前の45℃以上にならないようにしてあげてください。
- 電気毛布の強弱で温度を調節
- 45℃以上にならないよう注意
夜の麹番
ここから温度を気にして一晩越します。ここまでくればあと少しです。
余裕があれば夜中も数時間おきに温度を確認してください。
45℃を超えないようにだけ気をつけましょう。


翌3日目 12:00 完成
昨日の夕方から温度キープして、ようやく完成です。
菌糸がしっかり伸びて、ぎゅむっと固まっています。


近撮すると、麹菌がしっかり繁殖しているのが分かります。
うっすら黄色っぽい色も出てますが大丈夫。麹本来の色です。
一般的な種麹は「黄麹」といって、こうした黄色がかった色をしてます。
(種麹の中には放射線照射を用いて変異させた真っ白になる麹もありますので、真っ白になる場合もあります。)


割ってみるとこんな感じです。


最後に、この固まりになった麹をよくほぐして麹布に広げ、荒熱と水分を飛ばします。
麹を崩したらなるべく薄く広げて…


ぐる~っとうずを作って…


凹凸をつけると表面積が増えて、温度と水分がより抜けやすくなります。


荒熱がとれたら、ビニールやジップロックに麹を移して冷凍庫で保管。
大体1ヶ月くらいで使いきりましょう。
まとめ
最後までお付き合い頂きありがとうございました。
製麹って、やってみると3日間もかかるうえ、夜中に温度も気にしなきゃいけないので、
「麹って造るモンじゃなくて買うモンだな」って思う方もいらっしゃると思いますが(笑)
色々気にかけて完成した麹は鮮度が抜群なので味と香りが良く、料理に使うのが楽しみになってきます。
もちろん市販の麹でも十分事足りますが、
「甘酒専用の麹に育ててみよう」
「味噌専用に育ててみよう」
なんてカスタマイズもできるようになります。
道具の衛生管理やこまめな手洗いに気をつければ、麹って意外とカンタンにできてしまいます。
ぜひ挑戦してみてください!
ここがよく分からないなど疑問・ご質問あれば、コメント欄にてコメントお待ちしてます。








